[かがやきの瞬間]スナップショットの魅力@東京都写真美術館
こちらは収蔵品展。どこかでみかけたことのある超有名作品から最近の作品まで。
今回の目玉はポール・フスコの「RFK Funeral Train」。
1968年のロバート・F・ケネディの葬送列車に乗り込み、これを見送る線路沿いの人々を車窓から撮ったもの。日本初公開らしい。感動的。
ロバート・ケネディは公民権運動に熱心で人種融和に力を尽くした。駅のプラットフォームで、線路沿いの田舎道で、橋のたもとに立つのは多くは黒人だが、白人も普通に混じっている。
いずれもこちら(つまり列車の方)を向いて厳粛な表情で見送っている。「SO-LONG BOBBY」とか「RFK We Love You」など書かれた横断幕を掲げていたり、軍隊式敬礼をしていたり、胸に手をあてていたり。
その人種を超えて敬愛された一人のリーダーを見送るという、ひとつの目的に集まった普通の市民を正面から撮るという稀代の機会を、フスコは厳粛な気持ちで行なった。その結果、作品群が時代を超えた価値を持った。
もうひとつ気に入ったのは鷹野隆大。
下井草駅前の踏切というとてつもなく平凡な景色の写真があった。この場所は私が以前通勤で使っていて、本当に不便で退屈。同じように横浜の国道沿い、沖縄の市街地、つくばの歩道の写真も。
こうしてみると日本中どこへいっても退屈で平凡な風景はこと欠かない。こうした風景のことを鷹野は「カスバ」と呼び、これまでなるべく見ないようにしていたが、あえて写真にすることにした。
私は平凡な風景が有名作家の写真になっていると、かえって何か意味があるのではないかと深読みしてしまう。だから平凡な風景を興味深いものとしてではなく、あくまでも平凡なものとして撮るという意識が面白かった。それがどんなアートの価値へ昇華するのかは分からないが。