オブジェの方へ-変貌する「本」の世界-@うらわ美術館
「本」をテーマに収集作品を充実させている美術館。浦和駅前のバス通り、レッズ本社並びにあるホテルのワンフロアーにありました。
小さな美術館ながら充実した企画展。現代アート作家たちの、本をテーマにした作品がたっぷりとありました。本だけに文字を読むことが多く、作品点数の割りに充実感があります。
聖書を一文字ずつ針でほぐした作品など、本そのものを素材にした作品が多かった。その中でも福田尚代がシンプルながら美しい。文庫本のページが一頁ずつ折られていて扇状になってるんだけど、一行だけはっきりと読める。一冊の本の中の一行が伝えることは…。また、岩波文庫って昔は薄い油紙がカバーになっていたんだけど、これだけを立てて置いた作品。薄くてはかなくも優美な姿にうっすらと本のインクが写っていたりして…。
個々の作品は別として感じたことは、60年代から80年代の日本の作家たちが言葉の作家たちと積極的にコラボレーションしていたこと。加納光於+大岡信、中村宏+稲垣足穂、脇田愛二郎+辻井喬ですよ。造形物を超える、言語表現を超える、といった意思が作品となって残っています。それによって当時の前衛運動の息吹が伝わってきます。
ザ・アートワークス・コミッティという団体が作ったArt Worksという作品は、複数の作家に作らせた作品の詰め合わせボックス。これを150部限定で制作・販売していたというもの。これまた80年代の何でもあり、やぶれかぶれの自由さに心躍りました。
松澤宥の「80年問題」はじっくりと読んでしまいました。狂気じみた言葉がタイムカプセルのような端正なアルミボックスに収められていて余計鬼気迫るものがありました。
あと、ハイライトの遠藤利克の焼かれた書物の群れは迫力です。20年以上も前の作品なのにまだ焦げ臭い匂いがただよっている。
うらわ美術館はノーマークだったけど、文句なく楽しめる展覧会だった。いい時間をすごさせてもらいました。(鉛筆と画板を貸してくれた看視の方、ありがとう)