グレゴール・シュナイダー「死の部屋」@ワコウ・ワークス・オブ・アート
グレゴール・シュナイダー「死の部屋」@ワコウ・ワークス・オブ・アート
端正な写真やオブジェではあるがいずれも死にまつわる香りをまき散らしている。
工事をしていたら壁に塗りこめてあった入り口を見つけてしまった、というような写真が数点。バスタブのある留置室のような殺風景な小部屋の写真が数点。部屋の中央にはスチールの焼却筒。ぶら下げられたビニール袋の上端からは運動靴がのぞいている。白い椀状のものは頭骨のよう。
別室には巨大なピンクの箱。両端に丸い入り口があり、茶室のようににじり入ると暗闇の中を手探りであちらこちらと構造をさぐることになる。
ギャラリーの方とお話をしたら、グレゴール・シュナイダーさんはご自分の家の中にまったく別の部屋を制作するという作品を作ったとのこと。彼は展示会の度にその部屋を解体し、あちらこちらで再構築する。同じ部屋がいろいろな場所へ移動し、いろいろな人々がそこを訪れたという記憶を蓄えてまた自分の部屋へ戻ったり、別の場所へ移動するということらしい。
その部屋には構造上あるべき空間があるのだが、そこへの入り口がない。今回の展示のピンクの箱も、暗闇のなかを膝立ちであちこちと探ったのだが、どうしてもそこにあるべきスペースがあるのに、入り方が分からなかった。
そのアクセスできないスペースの存在がかえって気になり、やがて暗闇のなかでそれを探していることに背筋が寒くなってくる。ドイツの作家ということで連想したのだが、アンネの部屋のことを思い出した。また、独房の写真はグアンタナモ収容所のものを模して制作したらしい。
精神性の高い、寓意にあふれた作品たちだった。