タブロオ・マシン [図画機械] 中村宏の絵画と模型:練馬区立美術館 2010年7月25日(日)─ 9月5日(日)
タブロオ・マシン[図画機械]中村宏の絵画と模型@練馬区立美術館
中村宏は1950年代から活躍している日本の前衛画家。ひとつ目のセーラー服女子高生や無限ループの列車をモチーフに当時の狂騒と喪失の時代を表現している。
展示は2階フロア全体を使って彼の全仕事を時系列に沿って見せてくれた。1950年代のルポルタージュ時代から10年ごとに区切り、コラージュ、青色、車窓、グラフィックデザインなどのテーマごとに手際良い。
新作は1階の小部屋。工事現場でよくみかける黒と黄色の縞模様によるオブジェと絵画作品群によるインスタレーション。工事現場らしき不穏な景色が、彼が長いキャリアで一貫して社会に対して警告を発し続けていることを感させてくれる。
ここの「限界表示」という平面作品では、「立ち入り禁止」の文字が裏返っている。つまりこちら側が実は立ち入り禁止ゾーンであって、そこから安全地帯を見ていることに気づくという趣向。かっこいい。
また、「携帯風景」には、本来見に行くべき車窓の風景を持ち歩けるようにした、という素朴なユーモアがある。
この作家は府中市美術館の「多摩川で/多摩川からアートする」という展示会でもみた。その時は観光芸術の仲間たちとの大きな作品も多く展示されていた。その時の方がもっと大きくて面白い作品がたくさんあったような。
観光芸術もハイレッドセンターもそうだけど、1960年代の日本の前衛芸術家たちは派手なパフォーマンスから、ともすると否定的な意見が多い。特に同時代を生きた方々に話をすると特に。
しかし、小説家や音楽家など多方面と積極的に関わり社会へ積極的に関わっていこうという姿勢は、今日の現代アート作家に見られなくなったものだ。まさに美術家がタレント並に活躍しており、素直にうらやましい時代。あの前衛の時代を、フルクサスとの関わりも含めてもう一回研究してみたくなった。