古屋誠一展 Aus den Fugen/アウス・デン・フーゲン
古屋誠一展@ヴァンジ彫刻庭園美術館
Posted 2:09 AM by admin & filed under 企画展(美術館).
出会った頃の写真からは若い女性ならではのこぼれ出す生への喜びがある。それが日々を重ね、精神の下降によって笑顔がなくなっていく。しかし、それでも彼は正面から妻を撮り続ける。あまりにも鮮明なカラー写真であるが故にそちらの世界を満たしている空気が伝わってくるよう。
また、亡くなってからの撮影では、何気ない日常の写真も良い。偶然見つけた小動物の死骸や藁の燃えかすの映像に、愛する者の不在による虚ろさという空気がただよっている。
意図があってのことがどうか分からないが、作品が年代順に並んでいない。そこがかえって緊張感を際立たせる展示になっている。
写真とはカメラを構えるこちらと対象との間の空気を写すものであり、そこには魂の対峙があるということを理解させてくれる作品群だった。