古屋誠一 メモワール. 「愛の復讐、共に離れて…」@東京都写真美術館
古屋誠一 メモワール. 「愛の復讐、共に離れて…」@東京都写真美術館
ヴァンジ彫刻庭園でたまたま出会ってから気に入っていた写真家。恵比寿でまとまった作品が見られると聞き出かけていきました。
実績のある作家なのでどの作品も見所あるんだけど、今回は亡き妻クリスティーネのポートレートを中心にした展示会。結婚してから子どもが生まれ、やがて妻が自死、その後の日々までを撮り続けた作品群です。
新生児だった子どもが成長していくにつてれ硬質化していく妻の表情。やがて1985年を境に妻の姿がみえなくなる。それでも成長し、立派な青年になっていく子どもの姿がかえって悲しみを誘う。
この方は、対象から浮かび上がる意味を映像として固定するためにはどうしたら適切か、という写真家としてのテクニックを十分に理解している人なのだと思う。その写真家としての徹底した技術で心が壊れゆく妻を撮り続けたのがこれらの作品群です。
それは感傷的で単純な感想を述べることを拒絶しているように思えます。人間の深みに通じるものを示唆していただきました。これからも忘れずにいたいと思います。
ところで、「記憶の復讐」と名付けられた、ベニスで撮ったものの上に間違って東ベルリンで撮ったものが二重露光してしまった作品が興味深かった。
その意外な効果もあるが、写真家のフィルムそのものを見る機会ってあまりないため、「この作品はこういう順番で撮られたのか、トリミングする前はこうなのか」ととても興味深かった。