岡田菊恵画業60年のあゆみ色彩と空間展@渋谷区立松濤美術館
ユーロスペースでの映画鑑賞のついでに以前から気になっていた松濤美術館へ。これは東急本店の脇を通り過ぎ、ほとんど山手通りになるあたりの住宅地にあります。
外側から見ると建物はそれほど大きくないけど、内部は噴水のある吹き抜けがあって、気持ちのいいスペース。職員の方たちも上品でさすがに高級住宅街のアートスポットという感じ。
この日の企画展は60年のキャリアがある女性画家「岡田菊恵」でした。
2階フロアは初期から2000年までの中期の作品群。静物や人形が多かった。いずれも平凡な素材、平凡な構成と思われがちだが、長いキャリアで流石!と感じさせるのが色使い。グリーンでもブルーでもそのままでなく、やや濁りのあるような塗りなんだけど、その濁りが心地良い深みとなっている。
このフロアで一番気に入ったのが「モネの池(2002年)」。緑陰の池に浮かべたボートと輪郭のあいまいな人物。このフロアーには心地良いソファがたくさんあって、いつまでもこうした絵に囲まれてゆっくりしていたい。
地下フロアは2000年以降の最近の作品群。こちらは瑞々しい色彩と陰の調和に打たれる。緑陰の水路の暗さが酷暑の夏に心地いい「疎水」が気に入った。
「描く人・吉野にて(2006年)」では、描く人物を小さく入れ込むことによってストーリーが広がる。小樽の運河の作品では手前の雪の小山のアンバランスさによってユーモアが湧き出す。作家が楽しんで描いている気持ちが伝わります。
いい時間を過ごしました。ときどき訪れてほっとしたい美術館です。