崔在銀(チェ・ジェウン)展―アショカの森―@原美術館
森と樹についての作品群。その展覧会だから都会の真ん中にぽっかりとある庭園の素敵な原美術館はとてもお似合い。これが軽井沢とかだったらそのまんますぎる。
最初の部屋、「アショカの森」は木材のきしみと不安定な足場がともに懐かしくて心地いい。この部屋を2階のテラスから見ていたらどこからともなく木材のきしみの音が増幅されて聞こえてきた。それは自分の立てた音が遅れて聞こえてきたようでもあり、自分の血管を流れる血液の音のようでもある。やはり懐かしくも心地いい。
その他の作品では樹皮の拡大や枝のゆらぎ、梢から漏れる月明かりがビデオや写真で綿密に描かれている。自然の現場やあるべき時間帯から切り取られた自然の姿がとても気持ちよくて、いつまでもこの部屋にいたくなる。
どうしてか私は本当の自然に包まれていると落ち着かない。むしろビデオや映画館で自然の景色を眺める方が落ち着くことを思い出した。実体験としての自然と観察する自然、その関係のずれが認識できた。
こうしてずーっとビデオや写真を見てきて2階の最後の部屋にたどりつくと、そこだけ窓から外が見える。カラスの鳴き声がガラス越しに聴こえてきて都会のリアルな自然が実感できる。そこまで構成を考えて展示をしたのならばさりげなくも素晴らしいセンス。
すべての部屋を通じて映像とサウンドと表現が綿密に配慮された展示でした。