港で出会う芸術祭「神戸ビエンナーレ2009」
第2回目の神戸ビエンナーレはメリケンパークのコンテナ展示に加えて、船上から作品を鑑賞する海上アート展、招待作家中心の兵庫県立美術館と拡大。
メリケンパークは眺めのいいロケーションで元気のいいボランティアに迎えられて、すぐにいい気分になった。作品は若手作家中心だったけど、のびのびとした作品が多くてフェスティバルならこうでなくては、というものばかりだった。
上品そうなご婦人方がコンテナを覗き込んで、「ほう」とか「まあ」と嘆声を上げているのが微笑ましく、当地でアートが広く受け入れられていることが良く分かりました。
コンテナアートの作品では人の心の奥深く潜り込むような「変態願望」と、大量のクラフトワークが実感できる「折り紙神宮」がよかった。
ここには生け花作品のコンテナもあり、各流派の自由な試みを競演していた。現代の活花ってすごいところに来ていますね。
その後ボランティア事務局の計らいで「風ノ船」プロジェクトに参加させてもらった。花の種の入った風船を乙仲通りを行く人々に渡し、神戸の風を感じてもらおうというもの。船の風船を浮かべている人々が通りを行ったり来たりしている景色を見るとむしょうにうれしくなります。
それからメリケンパーク発の遊覧船で海上アート展。船からしか見られない作品もなかなか乙なものだが、船上でハプニング的に始まるパフォーマンスも楽しかった。しかし、本格的な舞踏だったのにムード歌謡の伴奏は余計だったのでは?
船はそのまま招待作家の会場である兵庫県立美術館へ。
インスタレーション、メディアアート、ビデオ作品と盛りだくさんだったが、私は奥田善巳、児玉靖枝、善住芳枝、岸本吉弘ら現代の抽象画に囲まれた最初の部屋が一番よかった。ちょうどアーティストトークもあって充実した鑑賞タイム。
榎忠の工業部品によるオブジェも圧巻だったし、藤本由紀夫の繊細な時間と空間表現もよかった。
それにしてもこの美術館の巨大で豪華なこと。もしかしてフロアー面積では国内最大では?
閉館まで時間があったので常設もひとまわりしたら、大岩オスカールの「Meat Market」があってうれしい偶然の出会い。巨大な画面全体のどこからどこまでも毒のあるユーモアがにじみだしている。
また、その真向かいにあった詫摩昭人という人の巨大な作品に心奪われた。どっかの農場の風景がモノトーンで描かれている。雨の中の景色のように垂直の無数の線でぼかされている。楽しいでも悲しいでもない、幼児の頃の無感覚な記憶のような作品だった。
神戸ビエンナーレは神戸の絶好の観光スポットを生かしたアートイベントで、おそらく観光振興や地域おこしを狙っている行政もアートファンも満足いくものだったのではないだろうか。
地元のお客さんも、それをお世話するアートボランティアも楽しそうにしている姿を見て、やっぱりアートフェスティバルは沢山の人が来て盛り上がらなければ、と思いました。