立石大河亞個展「音雷韻走査」@山本現代
1992年前後の作品だから立石の円熟期。企業の所有だからなかなか展示されないものらしい。たっぷり楽しめた。
巨大キャンバスに大小のモチーフや小画面、図形、テキストを自由自在に配置し、奥行きと広がりのある画面で彼の世界観が表現されている。
引いて全体を見るのもよし、寄って詳細なモチーフを読み解くのもよし。一枚で短編小説ひとつ分くらいは楽しめる。展示会全体で言うとアンソロジー小説くらいか。
入口正面の「昭和二十一年筑豊之図」では暴力と闘争、郷土愛がリリシズムを持って描かれている。この頃から混沌としているようで端正な構成は完成されていたのかと思う。
ダッシュボードにランドスケープが侵食していくスケッチの連作は、彼によるアニメ作品があればと妄想させる。
府中市美術館での企画展「多摩川で/多摩川から、アートする(2009年)」で見た、中村宏と立石紘一によるユニット「観光芸術研究所(1964-66年)」のアーカイブを思い出した。
このとき、残された図面から製作されたという「ネオン絵画」の実物があったが、あれは今どうなっているのだろう。美術館の倉庫にしまったあるだけならどこかで常設してくれないものか。
ネオン絵画の画像はこちらにある。