鉄を叩く―多和圭三展@目黒区美術館
ひとかかえもある鋼鉄の塊をひたすらハンマーで叩く。そうして延伸され圧縮された形状や、フラクタル状であったり、微細な傷で覆われていたりする表面から作家の行いと素材のありようが否応なしに浮かび上がってくる。
2階の二つの展示室には溶解と先鋭が一体となったような大作が一対ずつ配置されている。どちらもカーペットを剥がされてコンクリむき出しになった床とよく似合っている。ミニマルな作品がホワイトキューブに置かれているからこそ、作品の微妙さ、場の微妙さに気づく。
最後の部屋は天井も高く大きな部屋なのに、鉄塊の作品が4点のみ。なのに絶妙の空間密度だったのは、拡散する空間を作品の存在感が引き締めていたから。ゆっくりと歩きまわったり、しゃがんだりして時間をかけて空間を楽しんだ。もの派の展示会は空間を楽しむものでもあると思った。
こちらも満足度の高い時間をすごさせてもらいました。
実際、良い展示会は映画を観たりレストランで食事をするよりも満足できることがあります。あたりはずれは大きいですが。
ただ、目黒区美術館は信頼度が高い。先日の「文化資源としての炭鉱」展も着想の良さで見ごたえのある展示会でした。大規模ではないですが、キラリと光る展示会をやっています。
また、ここのカフェはボランティアの運営らしく上品な御婦人方が接客してくれます。ということでコーヒーとマドレーヌのセットでしばしゆっくり。
ところで、石を積むという作品の写真が展示されていたが、所沢野外芸術展というのが1978年からしばらくあったらしい。どこかで調べてみよう。