「驚異の部屋」展@東京大学総合研究博物館小石川分館
小石川植物園のはずれに建つ、旧東大医学校の建物が博物館になっている。
ここには東大が創業以来行ってきたあらゆる分野の研究活動で使われた道具、収集物、研究資料が展示されている。天体望遠鏡、動物の剥製、植物のサンプル、計測道具、地球儀、建築模型、産業機械の模型など、ともすればとりとめもない展示である。また、各展示物にはキャプションがないので説明や理解増進にはかなり消極的に思える。
しかし、歴史ある建造物内を移動し、窓外の庭園を眺め、古色蒼然とした什器やそれに格納されたアイテムを見ていると、自然と日本人の博物研究や技術研究の空気が伝わってくる。ここでは、特定の知識を伝えることをしないことによって、日本の学術研究というものがこれまで歩んできた道のりや、その時代の空気を伝えてくれる。博物館展示の極北としてあるべき形だと思う。
とかく饒舌な展示手法やサイエンスコミュニケーターが期待される今日の博物館であるが、ある地点を守り続けてくれる場所であり、年に何回かは巡礼のように訪れたい場所である。