鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人
大御所らしく大規模な企画展。アニメーションの原画や本格的な平面の大作、巨大オブジェありと満足度の高い個展でした。
この方のアニメーションは多分すべて手書きなのではないでしょうか(CGやセル画でなしに)。本当にペンを使って大量に原画を描いています。とにかく絵を描くのが好きなんだな、ということが物量で伝わってきます。
大作を4面の壁に配置した赤い部屋では、中央のユリの花から強烈な香りが発散されているという仕掛けがよかったです。また、ベビーヘッドのミラーボールまでのアプローチが秀逸でした。それでも展覧会全体を地球の中心への旅とする仕掛けに関してはよく分からかった。
しかし、こんなにたくさんの文章を読んだ展覧会は初めてかもしれない。大量の作品が一列に配置されていて、その一点一点に本人手書きのキャプションがあり、物語が展開されている。そんな仕掛けが確か3列くらいあったような。それって、一方では作品の固有性を損なうのでは?
アート作品って、その作家のどれか一点が美術館の壁にあっても価値があるが、全部そろえると作家の総体も分かる、ということであるべきでは?などと考えてしまいました。
それにしても、この方の作品展示のアイデアのかっこいいこと。開かれた分厚くて巨大な本の見開きに展開するスケッチとか、生木の足組みに黒塗りのガラスケースを平面においてみせるやり方。あと、見開きブックにプロジェクターでビデオ作品という新趣向もあった。
作品そのものよりも展示の仕方に目を奪われる展覧会だった。