しんぞう「そして人生はつづく」展@新宿眼科画廊
初日の18日に行ったのだけど、まだ準備中だった。震災で混乱する首都圏での個展なので仕方がない。
これまでの作品は、自分の中に閉じこもっている苦しさが体液となって滲み出しているようなものが多かった。
しかし、今回見られた数点の新作は、どれもためらいながらも外側へ踏み出そうとする動きが見える。まだ踏み出し切れていないが、外と内の境界線で外側をうかがっているような姿勢である。
キャプションなど付けられていなくてタイトルが確認できなかったのだが、この時期に出すのはためらわれたと作家本人が言う、流れの中で小さな家から顔を出している人物の作品は、そのモチーフとはうらはらに希望が見えた。
数年でも付き合いがある作家だと時間の流れの中で作品と向き合える。
作家は近々結婚するとのこと。また、精神科医春日武彦による「臨床の詩学」のグラフィックを手がけたりと充実した仕事ぶりである。そうした人生の変化が作品のトーンに変化を及ぼしているように思う。
これからも長く見続けていきたい作家である。
それにしても、しばらく震災に関する話題ばかりに取り巻かれていて、アート鑑賞などはためらわれる気分だった。しかし、久しぶりにギャラリーに出向いて、作家と話をすると日常の強靭さを取り戻すことができて救われた。
誰もが不安を持っているが、言葉を交わすことによって救われていくのだ。これまでの日常から切り離されて、孤立していると感じている人は、アートの現場に出向いて会話するべきだと思う。