アートの課題2011 -僕らはいま一体どこに立っているんだろう?@トーキョーワンダーサイト渋谷
アートの課題2011 -僕らはいま一体どこに立っているんだろう?@トーキョーワンダーサイト渋谷
小規模な会場ながら多様な作品を見ることができるアートスポット。コマーシャルギャラリーとは違う、公共ギャラリーならではのキュレーションが楽しめる展示会である。
米田知子のトロツキーのメガネ、満州事変の始まりの土地である瀋陽、サラエボの地雷原など、近現代史にまつわる作品を大判プリントで鑑賞できる。歴史が現代にも存在することを奥行のある映像で見せてくれる作品である。高校あたりの歴史の教科書で使ってみてはどうなんだろうか。
カンボジアのクゥワイ・サムナンのビデオ作品で、いろいろな水辺のある場所へ行って水をかぶるというのに見入ってしまった。水上住宅で子どもたちに見られながらとか、生活排水でどろどろの水をとか、誰もいない河原でとかで、真面目な表情でひたすら水をかぶる姿は何かの贖罪を思わせる。サムナンは80年代生まれとのこと、カンボジアの歴史を踏まえてみると感慨深い。
岩井優の街中でゲリラ的に農業をやってみるという作品「東京耕作未遂」も、シンクを真下から映して、肉やら魚やら自分やら何でも洗っちゃう「Galaxy Wash」も面白かった。
田村友一郎の作品で、福島で桃の収穫をするやつと小笠原で巨大なマンゴーをむくやつもよかった。フクシマ=”Fortune Island”、父島=”Father Island”というキャプションにじんとした。田村はGoogle Street Viewの映像だけでドラマを構築した「Nightless」がとても印象的だったのを思い出した。最近では一番驚かせてくれる、注目の映像作家である。
ベトナムのディン・Q・リーの「From Father to Son, A Rite of Passage」は、父・マーチン・シーン出演の映画「地獄の黙示録」と、息子・チャーリー・シーン出演の「プラトーン」を2面マルチスクリーンで映し出した作品。数十年を経ても変化のないベトナム戦争の描き方を表現しているのか。
本当はこのビデオルームでもっと映像を見たかったのだが、トークイベントが始まるとのことで映像停止となってしまった。残念。