イケムラレイコ うつりゆくもの@東京国立近代美術館
荒いキャンバスに淡いマチエールの平面作品とテラコッタに彩色を施した立体作品、それにいくつかの詩(俳句)による大規模個展。スペースをゆったり取った気持ちのいい展示空間だった。
女性のひとり客が特定の作品の前でずーっと佇んでいる姿をよく見かけた。刺激的ではないが感性の深いところが合えば忘れられない作品なのではないだろうか。
テラコッタの少女像は頭部がなかったり、足がなかったりとポッカリとした空洞が印象的。異様なのだが決して不快でなはい。空洞は空虚ではなくすべてを呑み込む宇宙への入り口のよう。
ところどころにイケムラの詩があり、これが展示空間のアクセントになっている。私はこの詩に911以降の私達へのエールを感じた。
展示会場の入り口にキツネの頭部の立体作品があり、出口にも人間の頭部の立体作品があった。その出口近くの「白い眠り」は、半開きの口もとで至福の眠りを楽しむ表情。これから現実世界へと帰っていく来場者を憐れむように見送っていた。
「Tree Love」というドローイング群を見たことがある気がして、監視員に聞いてみたら、やはり2008年の展示会「エモーショナル・ドローイング」に展示したものと即答してくれた。ここの監視員は本当に教育が行き届いていると感心した。