「コズミック・トラベラーズ―未知への旅」@エスパス ルイ・ヴィトン東京
「コズミック・トラベラーズ―未知への旅」@エスパス ルイ・ヴィトン東京
海外作家中心でいつもハイソな雰囲気をただよわせているスペースだけど、今回のグループ展は国内作家中心。しかも、評価のかたまった大物ではなく、ちょっと外れたところにいて気になる作家ばかりという渋いチョイスだった。
横トリでも描きまくっていた佐藤允が爽快だった。もはや指先から世界が生じているかのよう。公開制作パフォーマンスを見てみたい。
塩保朋子の細密な切り絵もすごかった。これは光によって落ちる影がすごいんだろうね。時間を変えてまた来たい。
最近ではこうした膨大な手作業を成果とする日本人作家が目に付く。道路だろうが壁だろうが、それが保管されなくても描きまくる淺井裕介もそう。
嬉々として描くという行為を延々と行う作家が国内に多いのはどうしてだろうと思うと同時に、これが日本のアートが世界に対抗できる特徴なのではないかと思う。
この会場で最も満足度の高かったのが渡辺豪のCGアニメーション。
以前、アラタニウラノで見たのは何冊もの本がゆっくりと上へ移動していくものだったが、今回のは乱雑に置かれたカップや茶碗などがゆっくりと分解していって、また別の視点に落ち着いていくというもの。全編20分間だったが、まったく飽きずに没頭してしまった。
すべてコンピュータグラフィックスだろうが、照明もオブジェクトもモーションもミニマル。それが枠、側面、底面などに分解されて行くと、日常的なモノが驚くほど多様な表情を持っていることが明らかになる。やがてそれが常態に収斂したとき、見ているこちらが深く安堵していることに気づく。
モノを見るという行為を問いなおす、という伝統的なアートの精神がここにあると思った。キュービズムを初めて見た観客もこうした感覚だったのか。
この中ではベテランの原口典之のオイルプールも景色のいいあの空間で見られてよかった。