「ソフィ カル―最後のとき/最初のとき」-6/30[日][原美術館]
ソフィ カル―最後のとき/最初のとき@原美術館
テーマに基づいた写真とテキストをページの代わりに壁面に設置し、本ではなく展示室で見せるという手法なので、私はこの人のことを編集系アーティストと呼んでいます。
今回の作品は、失明した人が最後に見たものをモチーフにした「最後に見たもの」と、初めて海を見る人をビデオでとらえた「海を見る」。
「最後に見たもの」の出来事は衝撃的だったり、あいまいだったり、いまだに甘美なものだったりといろいろ。ゆっくりと写真を見たり、読んでいるうちにいくつもの人生にふれたような満足感がある。
しかし、こうした作品だときちんとした日本語で読みたい。パネルはフランス語で入り口で渡されるペーパーで日本語を読むことになる。
それがただのコピー用紙で、しかも明らかにレイアウトしていない(字が小さい、行が長い)。もうちょっときちんとしたつくりにならなかったのか。持ち帰って大事にしておきたくなるくらいの。
ソフィ・カルの作品はいろんなところで見られるだけど、他所ではラミネート加工したペーパーをリングで留めてその場で見る式が多い。そろそろ本気なハンドアウトで鑑賞したいものだ。
あと、文章が翻訳に過ぎなくなっている。もっと文章に気を使ってほしい。江國香織とか角田光代にお願いしたらどうだろうか。
写真「海を見る」はイスタンブールに生まれ育ちながら海を見たことのない人を海岸に連れてきて、その様子を背後からビデオで撮影したもの。
日本のバラエティ番組にありそうなネタだが、あくまでも落ち着いた映像でゆっくりと背中を映している。最後にゆっくりと振り向くのだが、いずれもあまりにも反応が薄い。
これもいつもの手法でテキストを並置したほうが良かったのではないか。しょせん断片とはいえ人生の物語は言葉の方が伝わるのではないか。
カフェ・ダールのランチバスケットは満足感たっぷりだった。