トーキョーワンダーウォール公募2012入選作品展ほか@東京都現代美術館
企画展のついでに見てきた。都知事を審査委員長としたギャラリスト1名、アーティスト2名、美術館の学芸員1名による審査委員会という構成と、その審査結果には相当疑問を感じた。こんなことだから膨大な予算を使っているのに東京のアートシーンはもりあがらないのだろう。
しかし、最初の部屋で井上光太郎があったのには思わずうなった。渇望に満ちた不穏な視線が忘れられない。あの展示空間では他のどれよりも吸引力があった。
ここで多くの絵画作品を見て思ったのは、キャンバスと筆と絵の具というのがいかに意識と近い道具なのかということ。多くのアーティストが意識下にある映像を具現化しようと種々のメディアやツールを選択するのだが、絵画ほど歴史があり廃れなかったものはない。
そして、意識に近いがゆえ絵画作品は作家の意識を素直に反映する。彼は何に興味があって、どのくらいの決意があって、やる気があるのか、という意識のありようが画面から明瞭に伝わる。それがアーティストに意識の深みや精神性が必要とされる理由だ。表現された作品にはそれがすでに帯びているのだ。
その後、常設展示。ピピロッティ・リストのふかふかルームのゆるふわ映像ではよく眠れた。
新収蔵作品ではアニッシュ・カプーアの造形を堪能。
立体作品のサイズ感、ボリューム感を最も気持よく感じさせてくれるのはこの人ではないか。シカゴやロンドンにある巨大な作品にも興味津々だが、このサイズでも立体造形を間近で鑑賞する歓びを十分感じさせてくれる。一方で、となりの曽根裕作品にはどうしてもモノの近くにいることの歓びを感じることができなかった。