吉行耕平 The Park@BLD GALLERY
1970年代に夜の公園でエキサイトするカップルとそれを密かに見物し、時には行為に介入する観客を赤外線カメラで撮影した作品群。銀座の小綺麗なホワイトキューブギャラリーではあるが、当時の大衆週刊誌の匂いがプンプンする好企画。
熱中するカップルとそれを取り巻く覗きさんたちの映像は、赤外線カメラ特有の荒い粒子もあってどこか牧歌的。夏の夜の夕涼みがてらの恒例行事のよう。
テーマがこれなのにきっぱりとした清々したがあるのは、吉行が作品としてこれらの写真を撮っていないからだと思う。吉行はあくまでも赤外線カメラという技術によって、最も手近でかつ興味深い対象を撮影しただけ。
そして、そこには写真学校で学びました的なアート臭さがない。吉行の作品は今でこそアートの文脈で再評価されているが、当時はただウケそうな映像を持ってくる人であり、それを週刊誌が買い取ったということだ。
イマドキの人気写真家は、日常をさりげなく撮りましたという作品でも、必ず後で何か語るんだろうなという匂いがする。それに対して吉行の作品群はいさぎよい。そして心地良い。
ところで、今回の展示作品にはなかったけど当時の発表には目隠しくらい入れたんだろうな。「あ、俺だ」ってことがあるかもと心配になった。