恵比寿映像祭2012「映像アーカイヴの現在 02:≪AA≫をめぐって―音楽と映像の交差点」@東京都写真美術館
恵比寿映像祭2012「映像アーカイヴの現在 02:≪AA≫をめぐって―音楽と映像の交差点」@東京都写真美術館
映像アーカイブという言葉に惹かれて参加したが、「AA」という映画を見ており、かつこの映画を気に入っていないと意味のないシンポジウムだったようだ。
「AA」は70年代に活躍した音楽評論家、間章(はざまあきら)についてのドキュメンタリー映画らしい。この人にも映画にも興味がなかったのだが、シンポジストの松井茂は昨年も恵比寿映像祭やアーカイブについての別のシンポジウムでもで話を聞いていたので期待していた。しかし、今回のプレゼンは精彩を欠いていた。
一方で、音楽家の長嶌寛幸の映像アーカイブについての言葉にはいくつか聞くべきものがあった。
長嶌は、映画がテレビ(ビデオ)と違うところは、①大画面であること、②暗い空間で作品と1対1になって鑑賞すること、③途中で停止させることができないことである。つまり映画は『体験』であるが動画は『環境』である。そして、これが映画が他の映像メディアに対し特権的である理由である、と語る。
そして、映画が体験であるならば、映画をアーカイブにするには単なる映像ストックではなく、映画館という常設空間の整備が必要であるとする。一方テレビのアーカイブについては、これも同じく単なる番組のストックではなく当時のCMやキャプションも付いた状態で保管しなければならないとも語った。
映像アーカイブを考える上での極めて示唆的な発想である。松井が後ほど、「かつてテレビ番組の制作者は、番組を記録として残さないことをもってよしとするメンタリティさえあった」と指摘した。
しかし、「AA」監督の青山真治の語ることは、単なる業界話に過ぎず、聞くべきことがなかった。また、長嶌にしても松井にしても、アーカイブを巡る自分の考えを発展させる議論がまったくなかった。全体的に残念なシンポジウムだった。