映画「プロメテウス」
見たことのない映画、人間や社会への違う捉え方、テクノロジーのもうひとつの方向性。「エイリアン」「ブレード・ランナー」「ブラック・レイン」のリドリー・スコット監督にはそんなことを期待していたのだが、全くなかった。ダサいテクノロジーを使った、よくいる人間が出てくる、どこかで見たことのある映画だった。
物語のつじつまが合わないとか、伏線が回収されていないとかはどうでもいいが、映像にも時間にも物語にもびっくりするようなことがなかったのにがっかりした。
現在にないことを、テクノロジーの延長線を踏まえて納得させてくれるのがSFだと思う。「エイリアン」では不幸なエンカウンターが極限な状況で描かれていたし、「ブレード・ランナー」ではある社会の行き着く先を雨の降り止まないロス・アンジェルスが印象づけていた。アップルの「1984」のCMでは「あの未来」と「この未来」をカタルシスをもって対比していた。
それが、どうして大企業の膨大な予算をかけた探査がいきなり有人探査なのか、終局的な危機においてヒロイズムが発揮されることになるのか。それはステレオタイプのドラマの延長線でしかない。
ハリウッドにはもはやセンス・オブ・ワンダーを期待することができないのだろうか。考えてみれば、かなり長いあいだ裏切られ続けている。