水戸芸術館|美術|CAFE in Mito 2011
― かかわりの色いろ
CAFE in Mito 2011 かかわりの色いろ@水戸芸術館
震災で被害を受けていた水戸芸術館。再開後初の企画展は、同館に関わりのある国内作家を中心に、展示やパフォーマンス、ワークショップと関連企画が盛りだくさん。
訪れたのは平日の午後だったが、「あーとバス」というイベントでボランティアらしき人たちに引率された地元の中学生の団体が訪れていて、とても賑わっていた。また、作家の原田マハによる「作品を見て短編小説を書こう」というワークショップなども興味深く、じっくりと読んでしまった。
展示会場には特に目玉といえる作家も作品もないが、 本城直季、蜷川実花、伊藤存など有名作家はもちろん、曽谷朝絵などの新人まで、国内の作家がまんべんなく網羅されている。そして、それぞれの作品が水戸芸の空間に共感して、共鳴しあっているようでとても気持ちのいい展示空間だった。
その中にO JUNがさりげなくあって、この作品どこかで見たことあるなあと思っていいたけど、この「河畔」は今年の新作だった。このあっけらかんと変わらないところがこの人の魅力だと再認識した。
鈴木康広のコンセプトアイデアスケッチ集には去年の瀬戸内で公開した「ファスナーの船」があった。
また、回転ジャングルジムのプロジェクション作品もあった。これは昼間のうちに公園で遊んでいる子どもたちを撮影しておき、夜になってからその映像を回転ジャングルジムに投影するという作品。夜になってから集まった子どもたちが大喜びしていた。
鈴木のそれらの手書きスケッチがさりげなく、かつ夢にあふれていて、こうしてアイデアを描いているときも彼は幸せなんだろうなあと感じさせた。
大友良英と須藤和也の「千波湖まで歩こう。」という作品があった。これは展示会場でヘッドホン付きのiPadを借りて大友のギターと須藤のトークを聞きながら片道40分の散歩をするというもの。まだ早かったし、お天気が良かったのでやってみた。
水戸芸のタワー広場を出て、デパートの脇道を通り、小さな路地を抜けて公園に。それからトンネルをくぐって線路の脇を偕楽園までと、地元の人しか知らないようなコースの散歩を大友と須藤に同行。橋の工事で最後まで行き着けなかったけど気持ちのいいウォーキングだった。
それはホワイトキューブからヘッドホンして出発し、街中を経てホワイトキューブへ帰ってくるという、アート体験を街へ持ち出すもの。新鮮な感覚だった。
しかし、そうした観光客が普段通らないような裏道を歩くと、まだブルーシートがかけてある屋根や、倒れたままのお地蔵様があったりして当地における震災の影響の大きさにも気づかされた。
というように色々な作品があって楽しめるのだが、私が最も興味を引かれたのが水戸芸の過去20年間に渡る企画展のポスター群だった。
水戸芸は、90年代からクリスチャン・ボルタンスキー、ジェームズ・タレル、イリヤ・カバコフ、河口龍夫、長沢英俊など、その後の時期に話題となる作家による大規模個展をいち早く行なっている。また、近年の企画展では「ボイスがいた8日間」「現代美術も楽勝よ」「夏への扉 マイクロポップの時代」などと、現代アートの話題をリードするテーマを取り上げている。
こうしてポスターを見ていると、水戸芸の20年を見れば国内の現代アートの流れが手に取るように分かる。
こうした素晴らしいアウトプットをコンスタントに出し続けている地方美術館がここに存在することを確認するためだけに、年に1回は水戸まで出かけても惜しくないと思う。