畠山直哉展 ナチュラル・ストーリーズ@東京都写真美術館
発破の瞬間をとらえた写真で有名な人という認識だったが、今回の大規模個展で彼の仕事の全体像が見えた。テーマは自然と人間の営みとしての建築なのではないか。
ヨーロッパの氷河にもロープウェーの建物があり、荒涼とした原野にもトラックの轍がある。また、洗炭場の巨大建築物には荒廃の気配が漂い、それが爆破される映像は最後のきらめきを発するかのようだった。
こうした自然と建築を追う写真家であれば震災の傷跡を追うのは自然なのだろう。ある展示室では震災後の陸前高田の映像と震災前の気仙川の映像を対置させて展示している。
しかし、陸前高田の60点組作品は展示としての完成度を備えていないと思う。小さなパネルを隙間なく配置しており、全体としてみればいいのか個々の作品をじっくり見ればいいのか戸惑う。気に入った作品があっても他の鑑賞者の邪魔になっていないか気になって仕方ない。
最後の部屋の発破写真は厳選した作品を大きく配置し、加えて壁面いっぱいのスライドショー投影だった。このスライドショーとプリントの組み合わせも組み写真のひとつだと思うが、こちらは迫力が伝わってきてよかった。
組み写真が成り立つコンテンツと展示方法について示唆のあるふたつの部屋だった。