空想の建築―ピラネージから野又穫へ― |
展覧会 |
町田市立国際版画美術館
空想の建築―ピラネージから野又穫へ―@町田市立国際版画美術館
19世紀の建築家による古代建築の再現の版画、現代の作家による建築をテーマにした作品、空想建築で有名な野又穣の作品があった。
昔から空想の巨大建築を詳細に表現したいという欲望が人間にあることがよくわかる展示。
18世紀フランスの考古学者が微細に描いたエジプト建築の版画はパースではなくほぼ側面図なのだが、オリジナルに対する畏敬の念が感じられる。
マーティンの描く「失楽園」の地下世界はとてつもなくワクワクさせる。私は読んだことないが読んだ人ならワクワクするのではないか。
ボルヘスの「バベルの図書館」は読んだ。デマジエールがその詳細を描いている。本でもかなり具体的に構造が表現されているが映像で見るのも気持ちいい。これ映画にならないだろうか。
この企画展では野又穣がハイライトらしいが、私は感心しなかった。初期の作品ではほぼ側面図のように建物を描いているが、私は以前から誰がこのような視点で建物を観るのだろうかと疑問に思っていた。
「マンハッタンの摩天楼は上から傲岸に見下ろすか、地面から羨望を込めて見上げるかしないと面白くない」と誰かが言っていた。
最近の作品ではパースがかかっていたり、光が流れていたりするが、そうなると平凡な絵柄になっている。ドバイで本物の巨大建築を体験できる時代に空想建築家は何を描くべきなのか。ここには答えがなかった。
こんなにいい美術館が町田にあるとは思わなかった。規模の問題がつきまとう市立美術館だが、ここのように対象を絞るのも悪くないなと思った。ともすると地元にゆかりの洋画家の作品ばかり集まってしまう館もたくさんあるので。