空虚の形態学@東京国立近代美術館
近美の収蔵品による小企画展。本当は岡本太郎展よりも楽しみにしていたのだけど、震災の影響で今週ようやく再開。
1960年代のフォンターナ作品から河口龍夫の2009年の新作まで、「空白」をテーマに選択された作品群が小さなスペースに展示されている。
空白を直接感光紙に焼き付けた杉浦邦恵のフォトグラムはストレートな空白の表現。
一方、若林奮は石器時代の壁画にあるネガティブハンドの衝撃を作品に昇華し、さらに空白の通路空間を描くことによって消失点への指向を表現する。
エミコ・サワラギ・ギルバートの三角形の膨大な量の網掛けは、先日都現美で見た関根直子や椛田ちひろを思い出す。綿密な手仕事が形象を浮かび上がらせる手法は、綿々と受け継がれている。
桜の時期にあえて無彩色なテーマに選んだキュレーターのセンスを私は評価する。
やっぱり私は目玉作品を見に行く展示会よりも、こうした文化や時代の文脈を読み取る喜びを味わわせてくれる展示会が一番好きなのだと再確認した。
会期短縮の影響で集客は厳しい数字だろうが、アートを鑑賞する喜びをもたらしてくれる価値のある展示会だった。これからも継続してもらいたい。
会場で無料配布しているパンフレットも読みごたえのある内容だった。