「311 失われた 街」展@TOTOギャラリー・間
忘れないために、まずは失われたものを復元することから始めよう。ということで津波によって失われた街の被災前の状態を1/500スケールのホワイトモデルで再現。それが岩手県野田、宮城県女川など14点。この時代に建築家ができることのひとつとしての力仕事に感服した。
モデルには被災前の航空写真と被災後の写真が同時に展示され、これがこうなったという現象がまさに手に取るように把握できる。
こうした情報は新聞の写真やテレビの画面で何度も表現されていることなのだが、空間として表現されるホワイトモデルはそこの人間の生活やそれを押し流す力の大きさを物理的に体感することができる。
こうして被災前の状態をモデルとして見ていると、そもそも何度も津波が来ている土地でこうした街のあり方に無理があったのではないかと思う。低く平たい土地に小規模な住宅が立ち並び、それを囲む堤防はいかにも弱々しい。
防災をベースにした街づくりがないがしろにされ、個人の権利が優先されきたのが近代だったのだろうか。街づくりはこれからどうするべきなのか、また、私たちはこれからどうして暮らしていくべきなのか、という示唆に富む展示会だった。
展示室の壁にあった株式会社日本デザインセンターによる「311 SCALE」というインフォグラフィックスも秀逸だった。
1. 演出しない
2. 主張しない
3. 世界に人々にとってわかりやすい表現を行う
4. 可能な限りの正確さを守る
というコンセプトを基に作成されたもので、地震のサイズ、津波の高さ、福島第一原発から排出された放射性物質の量をクリアーにかつ量が体感できるように表現してある。
壁面いっぱいに展示されているものも素晴らしいが、これがウェブサイトやタブレットPCのアプリとなって公開されている。
メディアクリエーターがこの度の事象に真摯に取り組んだ成果だと思う。日本のメディア文化もまた、あれ以降に取り組んでいることの証拠である。