時代の風:憲法記念日に考える憲法改正―京都大教授・中西寛「9条より、まず政治改革」
私は憲法改悪にはもちろん反対だが、硬直した改憲アレルギーにも与しない。5月3日の毎日新聞「時代の風(中西寛)―憲法記念日に考える憲法改正」の冷静な意見に好感を持った。今日、改憲で9条を焦点とすることは適切でないし、国民から広く支持されない。なぜなら、もっと重要な要件があるからという。
それは、まず衆参両院の権限関係の規定(ねじれ解消)であり、次に投票権の平等(一票の格差)を確保する制度について、そして政治資金について(政治とカネ)の基本原則である。「政治家、特に多数派を占める与党が自らの権力を制限し、身を切る覚悟なしには、国民に憲法改正の必要性を納得させることはできないだろう」と戒めている。
「ねじれ解消」「一票の格差」「政治とカネ」の問題を優先して、憲法改正によってこれを解決する。これは多くの一般国民にも納得の行く意見ではないだろうか。
「日本を取り戻す」とする右派(的)勢力と、一行たりとも憲法は変えさせないとする左派(的)勢力が双方硬直して、こうした多くの国民が重要と認める問題について動かないのなら、かれらは社会にとって迷惑な存在でしかない。
本来であれば「ねじれ解消」「一票の格差」「政治とカネ」の問題を改憲によって解消すると主張とする野党勢力があるべきなのだが、該当する政党がそれをしない。それこそが最も悲観すべきことなのかもしれないが。