■2014年3月30日[日]まで 「ミヒャエル ボレマンス:アドバンテージ」展[原美術館]
ミヒャエル ボレマンス:アドバンテージ@原美術館
ボレマンスはヨコトリ2011で数点が目立たない所にあった。確か小柳でも一回みたことがある。
なんとなく忘れられなかったので今回まとまって見られて良かった。
いずれも人物の小品ばかりで大きいのでも40号くらい(これは静物)。人物はどれもひとりで下を向いて何かに没頭しているのでポートレートとは言えない。
チラシの説明を読むと「精神性」とか「孤独」とか「シュルレアリスム」とかもっともらしい言葉が並ぶし、タイトルも「探求(Quest)」「分割された(Divided)」「預言者(The Prophet)」などそれらしい。
しかし、私はそうした言葉はまったく浮かばなかった。むしろそうしたものがないことが興味深いし、最後にはユーモアが感じられたほどだった。
アートが評価されるには大きな物語があることが手っ取り早い。例えば宗教、無意識、社会、テクノロジーなど。
観るものは作品にこうした言葉に当てはめてわかった気になる。作家も学芸員も意図的にそうする場合がある。
しかし、作家が本当にそうした動機で創作するのか本人しか知らない。あるいは本人にも分からないのではないか。
ボレマンスの場合、そうした物語を観るものが勝手に投影してくれることを可笑しがっているような気がする。
実際、「仮面(Mombakkes)II」という作品があった。何となくだがこれは後から透明な仮面部分を描き足したのではないかと思う。また、「預言者(The Propet)」という作品。普通の男性の顔に後からヒゲ部分を描き足したら意味ありげになったという感じがする。
いずれにしても、描くという行為が得意な者が心ゆくまでそれをしているという歓びが伝わってくる素晴らしい作品群だった。この作家についてはこちらもその歓びを存分に味わっていればいいのであって、意味の後づけはよけいなことなのだろう。