「リンゴが腐るまで 原発30km圏からの報告‐記者ノートから‐」(角川新書)笹子美奈子
読売新聞若手記者による原発被災者のその後と現在レポ。
被災者の保障金について。その違いによる被災者同士の精神的対立。原発立地地域と隣接地域の差異。原発による利益を受けてきた住民の現在の意識。省庁と自治体、県の非効率性などを取り上げている。
おおむねあますところなくトピックを取り上げているが、どれも表面的である感がある。新聞の特集記事でいいのではと思った。
むしろこの本によって、当事者でない者によるレポはどうあるべきかを考えた。
自分は当事者ではないし、当事者のように感じることはできないと認めることから始めるレポもある。当事者に引き回されるだけだが、ひたすら愚直に引き回されるというドキュメンタリーもある。
レポ・ドキュメンタリーは対象あってのものだが、自分はどういう人間なのかということが否応なしに浮かび上がってくるものだと思う。