映画『さとにきたらええやん』

映画「さとにきたらええやん」

大阪、釜ヶ崎にある「こどもの里」という児童施設を舞台にしたドキュメンタリー映画。

この施設は「(大人でも子どもでも)誰でも利用できます」「子どもたちの遊び場です」「利用料はいりません」とあって、補助金や寄付金だけで運営をしているとしたらすごい。

映画は監督が自分で撮影し、インタビューの聞き手もしているらしい。本人の姿こそ画面に映らないが映画全編に制作者の影が濃い。監督が対象に寄り添いすぎている印象が強くて好きになれなかった。

この施設はお泊まりも可という。それで経済的・精神的に子どもを育てられない母親の娘をずっとあずかっている。そして、たぶん施設長の発案で、その子を含む利用者の児童にホームレス支援の夜廻させるシーンがある。

それはそれで意義のあることなのだろうが、私にはあの子たちには「私はそんなことしたくない」と言うことは出来ないのではないかと思った。

この映画にある大阪の下町の子どもと大人の泣いたり笑ったりの日常は、それなりに美しいのだが、私はこの施設の日常に馴染めない子どもが、この地域にはいるのではないかと気になった。

ドキュメンタリーは対象への距離が大事なのだと思う。対象から遠くてはもちろんつまらない映画になるが、近づきすぎてもいけないのだ。

監督は「こどもの里」に来ない子どもにもカメラを向けることができればよかったのにと思った。