「帝都東京を中国革命で歩く」譚璐美
歴史を顧みればそもそも交流が深く、相互に尊敬しあっている日中。なのに近年の関係悪化は意図的であると同時に、一般国民の歴史への無知から生じていると思う。
本書は明治後期から大正にかけて東京に留学した中国人たちの足跡を、早稲田、本郷、神田などの土地に沿って書いたエッセイである。そこには孫文、魯迅、蒋介石、周恩来などの有名人もいるが、そうでない者もいる。
早稲田大学の中国人留学生が多く滞在した早稲田鶴巻町にあったという清国チャイナタウン、神田神保町にあった当時最大規模の日本語学校であった東亜高等予備学校などの土地及び施設が詳細かつイキイキと描写されている。
また、関東大震災にみまわれた中国人留学生の保護に日華学会の日本人たちが奔走したことについても2章にわたって書かれている。分散した留学生の収容、一時金の支給、帰国希望者のための船便の便宜などそれは手厚い。
本書の意図にあるように、この本を持って帝都東京の中国人留学生と彼らを支援した日本人たちの面影を求める東京散歩はさぞ楽しかろうと思う。