『引揚げ文学論序説: 新たなポストコロニアルへ』朴裕河
うちの叔母も上海からの引揚げで当時の贅沢な生活の話を聞いたことがある。
この引き揚げによって650万人もの兵士と民間人が内地へ還ってきたという。その中には後年活躍する多くの作家がいた。いわく埴谷雄高、湯浅克衛、五味川純平、古山高麗雄などなど。
しかし、この引き揚げ体験を中心テーマとした作品が意外と少なく、結果としてこれをまとまったジャンルとした研究もないのだという。
朴はこれを「引揚げ文学」と名付け、新たな文学論の対象として取り上げることにした。本書はこの文学論の序説・序論である。
何よりも韓国人の日本文学研究者がこの新たな分野を取り上げたことに感心する。
湯浅克衛『移民」、小林勝、後藤明生『夢かたり』など知らなかった作家も取り上げてくれた。これから読んでみようと思う。