『六月の雪』乃南アサ

『六月の雪』乃南アサ

30代の日本人女性がふとしたことから祖母の生まれ育った台南へ行くことに。言葉はもちろん、台湾の歴史背景も知らない彼女が、現地で知り合った人々と祖母の足跡を探すうちに歴史の現実を知るという小説。

確かに日本の歴史教育では台湾領有、韓国併合、満州国建国などは通り一遍かまったく触れないだろう。しかし、ここまで何も知らないのが実際の30代かと思うとがっかりする。

台湾で美食三昧の観光もいいだろうが、実際に行って人々や文化に興味を持ち、歴史を調べてみるのも旅の思いを深めるのに大事なことと思う。

なぜ現地の若い子が歴史に興味を持たないか、なぜ中高年以上に感情表現の薄い人が多いのか、なぜ高齢者に日本語の上手な人が多いのか。

一国の歴史というのは多くの層によって成り立っている。目を凝らして層を透かして見てみればわかって来ることがあるものだと本書に教えられた。