「紫の雲」M・P・シール
人類の滅亡後ひとり生き残った男を描いた19世紀の幻想小説。
人類滅亡の理由は古今東西の小説ではいろいろとあるのだが、この小説のように「本来人間が足を踏み入れてはいけない場所、北極点に行ったこと」というのは珍しい。地球がその報いとして紫の雲によって人類を滅ぼすことに決めたという。
科学と信仰がせめぎ合っていた時代が生み出した小説として読めば、生き残った男のその後の行いも味わい深い。
しかし最後には他者の存在によってただの文明人に戻る。それを人間の復活と再生とするという考えが近代意識の限界か。