映画『わすれな草』

アルツハイマー病の母、そして彼女を支える父の姿を映像作家である息子のカメラがとらえた数年間。これが小説でなく、劇映画でなく、ドキュメンタリー映画になったことをまずは祝福したい。

そしてこれは介護についての映画ではない。「運動」と「活動」の時代を生きた女と男の、その後の長い人生についての映画である。それを終わり近くの数年間をとらえることで描こうとするものである。

このふたりは「自由恋愛」や「開かれた結婚」という主義・主張を貫き通した夫婦だった。その人生の行き着いた先がこのように静かな介護のある生活であったことに人生の不思議を見た。

社会主義運動に没頭していた頃の若いふたりの写真は素晴らしくかっこいい。しかし、年老いた夫が妻の背中をさすっている姿、足をさすっている姿もまた美しい。