『我的日本 ー台湾作家が旅した日本』
台湾の作家、エッセイスト18人による、日本の旅をテーマとしたアンソロジー。台湾の人々が「観光地」として見た日本が描かれていて新鮮。昨年、2泊3日で台湾を旅して以来中国語に興味を持ち、中国語講座に通い始めたうちの奥さんに読ませたいエッセイが何編かあった。
桜の季節になると毎年日本に行きたい熱が高まるという「はい、私は桜の季節にお花見に行ったことがないんです(江鵝)」では、実際にこの季節に多くの台湾人が日本を訪れていることが分かる。
日本語学習者によるエッセイ「美女のように背を向けて、あなたと話す。あの冷たい日本語で(盧慧心)」は、軽い口調ながら鋭い日本語論。欧米人とは共有できない笑いのツボを、台湾人と日本人は共有できるらしい。
「母を連れて京都へ行く、ときには叔母さんもいっしょに(李屏瑤)」は、母と叔母を連れての京都旅行の顛末記。彼らが日本の楽しみ方をよくわかっていることが分かる。
西欧の日本への視点とか韓国の日本への視点についてのエッセイは探せばいくつかあるが、台湾によるそれは珍しい。若い作家によるそれは政治的視点でなく、複雑な感情でもなく、純粋な観光地としての日本であり、テレビドラマや小説から伝わった日本でもある。
読んでみると、翻訳が日本語として練れていないことに気づく。しかし、そこがまたいい。これは一般的な翻訳読み物ではなく、研究資料として読むべきものか。それがこの新鮮な読書体験に一役買っていることは明らか。