『象徴天皇の旅: 平成に築かれた国民との絆』井上亮

『象徴天皇の旅: 平成に築かれた国民との絆』井上亮

本書は30年間にわたって皇室担当記者を勤めた著者による、平成天皇の旅の記録である。その旅は全国で行われる植樹祭を始め、中国、フィリピンなどの外国訪問やパラオ、ペリリューなどかつての戦場も。もちろん被災地訪問、離島訪問など多岐にわたる。

著者はその旅に毎回同行し、その都度感じた天皇と一般とのふれあいのあり方、警護のあり方、皇室報道のあり方などを問題提起している。

問題は多々ありながらも、それにも増して感動的なのは、平成天皇の「常に民衆とともにある」「戦争の記憶の風化を押し止める」という意志である。天皇の旅はその意志の表現であった。こうした象徴元首は世界に類を見ない。

平成という時代は何だったのかを考える上で、天皇の旅について知ることは必須であろう。その意味で本書は貴重な資料である。