「あなたが生きづらいのは「自己嫌悪」のせいである。 他人に支配されず、自由に生きる技術」安冨歩
一見よくある自己啓発本であり、実際に自己啓発が本書の目的でもあるが、人類や社会への洞察の深さから凡百とは一線を画する書である。
安冨が本年の参院選挙運動でマイケル・ジャクソンのヒール・ザ・ワールドをバックに「子どもを守りましょう」と繰り返すのはなぜなのか、本書を読んで納得がいった気がする。
私が最も興味深く読んだのは第4章『「自愛」に向かうために、できること』だった。この章で安冨は、流れに身を任せながら人生の舵は自らが取る、という態度について書いている。
経済学者中村尚志の言葉として「自立とは、依存する相手が増えることである」が引かれている。人に頼らない生き方はしょせん孤立につながるもの。安心して頼れる人を作り、頼られる関係を作っていくことが大事だという意味である。深く納得した。
それから人が生きていくのにそんなにお金が必要なのか(年収50万円で充分)というのも、以前から私が考えていたこと。これも深く同意である。
しかし、こうして書籍になってしまうとただの啓発本になってしまうのが残念。安冨が国会議員に立候補し、一風変わった選挙運動をしたのは、こうした考えをもっと広めたいという意思なのではと解釈している。