『魂の脱植民地化とは何か』深尾葉子

「魂の脱植民地化とは何か」深尾葉子

さいきん集中的に読んでいる安冨歩の参加している叢書「魂の脱植民地化」の最初の一冊。

さまざまな「魂の植民地化」のケースを、ゼミ学生のレポートや「ハウルの動く城」、福島からの自主避難者の声などをケースとして取り上げている。「蓋」と「自己」そして「憑依」がそれを理解するためのキーワードである。

しかし、もっとも興味深いのは深尾本人の人生を取り上げているということ。

中共支持者の両親を持ち、日本における文革体験に満ちた幼少時代の自分をあからさまにケースとして取り上げる。また、長じてからは中国研究者として彼の地へ渡り、様々なフィールドワークを行ったことのみならず、自分の恋愛体験や結婚生活、母親との良くない関係についても語っている。

それはこれまでの社会学や心理学の論文にはなかったアプローチであることに素直に感心した。

本書にもどこかに書いてあったが、事象に巻き込まれていないと真に理解できない(記憶から再現)というのが「魂の脱植民地化」のアプローチである。その精神は一貫している。

表面だけ読めばよくある自己啓発本のようだが、本書は正当な学問的手法によって書かれた論文である。「魂の脱植民地化」とは何かということについては原典に当たるべきであるという、それが理由でもある。