「チャーズ 下―中国革命戦をくぐり抜けた日本人少女」遠藤誉
衝撃的な引き上げ体験の記録「チャーズ 出口なき大地」の続編。単行本の「続 失われた時を求めて」に天津編を加えたもの。これも想像に絶する苦悩に満ちた道程の記録。物理的な苦痛のみならず、精神を守るためか感覚を閉ざして過ごした幼少期の精神史として壮絶。
遠藤は今日、祖国で物理学研究者として成功しても、なお記憶に呼び出すことのできないことを抱えたまま今日を生きているという。そして、それは予想もしないことをきっかけに本人を現実から引き離し、ガラス玉に閉じ込める。
それだけ恐ろしい記憶だったということか。しかし、それでも過去を明らかにしなければならないという苦しさもある。今日ではPTSDという言葉もあるが、それよりも魂のさまよいの記録として読む者を慄然とさせる。