映画「彼らは生きていた」
公開翌日に青山に行ったらまさかの満席!で、翌週の金曜夜の回。これまた満席で追加席まで出てた。なんでドキュメンタリー映画なのにこんなに人気があるんだろう。
100年前のフィルムを最新の技術でフレーム補間し、彩色。音声もアーカイブのテープを補正してるのでクリアー。そんなことで驚くような映像に仕上がった。まるで近頃のビデオで撮った映像のよう。
しかし、苦境でもユーモアを忘れない、捕虜の扱いも人道的であるという英国人像。そして戦争は愚かしいもので決してしてはいけないという平凡なテーマには辟易とした。
考えてみれば第一次世界大戦の少し前にボーア戦争があり、中国では義和団の乱があった。この時代に限らず英国はいつでもどこかで戦争をしていたのだから、監督はどうしてこの戦争を取り上げたのかわからない。
私はドイツ人捕虜のシーンを見ながら会田雄次の「アーロン収容所」を思い出した。この本では英国人がアジア人の捕虜をどう扱ったのか。人種や種族に格差を設定し、現地人同士を対立させるというのが植民地経営ということがわかる。
映像テクノロジーとしては素晴らしいが、心をうつドキュメンタリーではない。優れたドキュメンタリーはそのテーマを取り上げる必要があった製作者の心情が作品から透けて見えるものだ。