映画『悲情城市』

映画『悲情城市』

侯孝賢監督の1989年の作品。ヴェネツィア映画祭金獅子賞を受賞。

牯嶺街少年殺人事件もそうだったけど、こんな映画が台湾で作れるのかと世界中が驚いたのではないか。私もびっくりした。

カメラが低めに固定されており、その枠を人が出たり入ったり。そのカメラも扉や壁で両側面が制限されていることがある。また、映像外の声で延々と会話が続いたりする。

長回しのカットが多くそれがストーリーをすすめるわけではない。また、人物の所作がうつくしい。日本語のセリフもきれいに聞こえる。今どきの目まぐるしい映像に慣れている目にはかえって新鮮なのではなかろうか。

これも2時間40分と長い映画。しかし、国民党支配の始まった頃の息苦しさと、将来への不安に覆われる日々に、それでも人々は生きていく。このゆったりとした映画時間でこそ、そうした時代は表現できるのではないか。それが成功した数少ない実例であろう。