映画『もう終わりにしよう。』

映画「もう終わりにしよう。」

NETFLIXでご紹介されて見てみた。付き合い始めて間もないカップルが彼の実家に行くことになり、その車内での会話から始まる不条理劇。

語り手が彼女なので、その彼女が主人公なのかと思いきや、彼女は本当は彼の空想の存在かもしれない、いや彼自身も年老いた掃除夫の空想の存在なのかも。と見るものの意識を二転三転させる、そうしたメタドラマを楽しむ映画。

エンドロールにも彼女は「young woman」としか書いてないし(劇中はで名前を呼ばれている)。帰りの車中で役者が入れ替わっているカットがあるのに気づいた。

知的な話題から下衆な話題まで、または不穏な空気や打ち解けた雰囲気までとりそろえた会話が延々と繰り広げられ、会話劇として楽しめる。最後のダンスと歌はおまけのように付け加えられた。

この映画は傑作ではない。監督もそのつもりで作ってはいないと思う。ただ、言葉のやり取りと人生の不条理を味わうための映画。楽しめたがそれ以上の深い意味もない映画。

同じ不条理映画でもデビッド・リンチだと狂気を動機として作っている感じがある。狂気が動機である場合、製作者の意志や意図はない。そして、その切実さが見ているものを捉え動かす。

この映画はこうした映画を楽しんでくださいという意図が見える。なのでもう二度と思い出すことはないだろうと思う。