映画『ジェニーの記憶』

映画「ジェニーの記憶」

ドキュメンタリー作家として成功した女性が48歳になって13歳のときのセックス経験を思い出すというストーリー。相手は40歳。それは恋愛だったのか虐待だったのか。

母に指摘され、当時の知人に話を聞くまでは記憶から拭い去られていた出来事。それを思い出し、当時の自分の姿と相手の男性を映像として描くとそれは明らかに…。それでも当時の「私」にとってはそれは自分の選択。そして自分が主体的に終わらせたことだった。

学校で発表した作文や、母の指摘、知人の態度、表情などから記憶の迷宮をたどっていく姿は苦難に満ちている。

当時一緒に過ごしたちょっと年上の女性にたどりつき、彼女に「私は13歳だった」と言ったときの相手の複雑な表情と、それに気づいてしまう自分。さりげないカットが傷の深さを表現している。

「まあ、70年代だったし」と話を濁すが、それはお互いへの思いやりの言葉。今になって思い出したりしない方がいいこともあるのだ。しかし、当事者からすればそれを明らかにしなければ今の自分が支えられないということもある。

そういう体験をしたことがないのでわかったふりはしないが、忘れたい出来事とそれを明らかにせざるを得ない気持ちの葛藤はわかる。いい映画だった。分かったふりで煙に巻くという「もう終わりにしよう。」よりは、はるかに見る価値がある。