映画『君の心に刻んだ名前』Netflix
戒厳令が解除された時期の台湾を舞台に高校生のゲイカップルの愛と苦悩の日々、そしてそれからの30年間の人生を描いた映画。
ゲイは今でこそBLというカテゴリーとして消費する素材だが、80年代の息苦しい時代背景ではカミングアウトは生きるか死ぬかの問題。この映画は今どきの軽妙なBLというよりも、隠し通したゲイの苦々しい人生の物語であるブロークバックマウンテンを思い出させる。
こうした本気の恋愛ドラマはもはや現代の男女では作れないのだろう。息苦しい時代のゲイカップルでしかドラマにならない。
また、シャツの胸にある名前と番号の刺繍、軍隊から派遣された指導官など、戒厳令解除直後の高校生の生活もつぶさに表現していて佳作。
それにしても主役のきれいな男の子たちもそうだが、脚本、演出、美術など台湾映画界の層の厚さを思い知らされる。最後のシーンはモントリオールだろうか、ロケからセットに切り替わって少年たちが夜の街でふざけあうところは本当に映画を見る喜び、作る喜びを分かっている者たちの仕事だった。
監督インタビューもあった。
台湾版『ブエノスアイレス』に込めた、LGBTQが認められるまでの歴史。 『君の心に刻んだ名前』リウ・クァンフイ監督インタビューhttps://youtu.be/mzfVBg54BGw