『ディアスポラ』グレッグ・イーガン

「ディアスポラ」グレッグ・イーガン

ハードSFが行き着くとこまで行ってしまった作品。情報としてネット上に存在する人類が宇宙創造の鍵となる存在を探して多元宇宙を旅するというストーリー。

もう、普通の人間は出てこない。生身の人間もDNA操作で現代人とは違うし、主要な登場人物は情報としての存在なので生き方も考え方も違う。彼らは通常は実時間の何倍ものスピードで生きており、必要な時のみ低速化して実時間を生きる。

自分自身が情報なので自分のコピーを作ってそれを宇宙の各方向へ送り出し、そのうちのひとつが消滅しても感慨もない。しかし、コピーは生成以降それぞれの人生を生きており、微妙な違いが生じてもそれは尊重される。など究極の世界観が楽しめる。

それにしても小説としては読みにくい。それも別の種の意識のあり方として理解しづらいのは当然とのことか。これもひとつの小説のあり方として貴重な作品である。ただ、人には手放しでは勧められないが。