映画「ハンディキャップ・キャンプ: 障がい者運動の夜明け」Netflix
ジェネド・キャンプは1950年代から70年代にかけてニューヨーク州にあった障害者のためのキャンプ。時代がそうだったのでそこでの日々は、ロック、ピース、フリーダム、そして希望に溢れていたものだった。
しかし、障害者の日常はやはり差別と沈鬱さにまみれていた。有名な障害児施設、ニューヨーク州ウィローブルック州立学校では50人の知的障害児に1名の看護人しかいない状態だったことにも触れている。米国であっても当時の障害者の状況はそれから推して知るべしである。
だからこそ健常者の若者たちと過ごすキャンプの日々はより輝いていたのだろう。参加者の中には「ヒッピーと大麻が吸えるらしいので参加してみた」と語るものもいた。
しかし、ジェネド・キャンプでの体験は、障害者たちにとってのひと夏の良い体験にとどまるものではなかった。
それまで行政の視野外であった障害者の権利について定めた連邦法504号が、公民権運動の高まりとともに可決されたのが1971年。しかし、その具体的施行が予算を理由に実施されない日々が続いた。
これに反発した障害者団体が具体的な行動を開始した。マンハッタンでの交通ブロック、ワシントンDCでのデモ、そしてバークリーでの保健教育福祉省ビルの占拠。そしてこれらの活動の中心にあのジェネド・キャンプの参加者であるジュディス・ヒューマンがいたのだ。
自立生活センター(CIL)など、その運動の土壌となったバークリーでの障害者支援活動の様子も生き生きと描かれる。また、ブラックパンサーなど暴力的な活動のイメージが強い団体が障害者の支援に奔走する様子が見られるのは興味深い。
というように、この映画はキャンプでの生き生きとした障害者たちと支援者たちの様子を前半に、彼らによる運動が社会を動かしていく様子を後半に描く。米国の障害者の自立はこうして育まれてきたのかと目の当たりにできる優れたドキュメンタリー映画である。
日本の障害者の運動については「介護者たちは、どう生きていくのか(渡邊琢)」に詳しい。