映画「ボーダー 二つの世界」Amazon Prime
人の感情を嗅ぎ分ける能力を持った税関検査官の女が実は人類ではなかったというストーリー。
スウェーデンの映画は日本人が思う洋画とは違う肌触りがある。ちょっと変わってて面白い。西欧にありながらもキリスト教文化とは距離があるからか。
人類ではない生物の生理をわかりやすく擬人化せず、「感情移入も一体化もできない」と異質なものとして感覚させるこの映画の文法が好ましかった。
それが「残酷」とか「愛情のある」とかはどちらでもいい。いままでいかに多くの映画や小説やアニメで「人間みたいな」動物とか異星人とか悪魔とか神様を見させられてきたことか。
そういった存在は人間に理解できる生態や生理である方が稀なことで、そうじゃない方が多いと考える方が合理的だろう。この映画はその点で覚醒させられる作品だった。
先日、カナダで原住民族の寄宿舎学校で多数の死体が発見されたとのニュースがあった。また「サーミの血」という原住民族への偏見を扱ったスウェーデン映画もあった。
スウェーデンでは原住民族との関わりを意識することがより一般的なのだろう。この映画からは理解して自分の文化に一体化するのではなく、理解できないものはそのままで尊重するべきという意思が感じられる。
だから異民族との関わりにおいて認識するべきことは「境界線(ボーダー)」であって「共感」ではない、というのがこの映画のタイトルの意味なのだろう。