『枝野ビジョン 支え合う日本』枝野幸男
立憲民主党党首の政策表明。「党の綱領とは違う」とはしながらも政策の方向性はこれに沿って策定されることは間違いない。
枝野の政治観は「保守・リベラル」。それは安倍以前の自民党政治と親和性が高い。そして枝野の保守とは、近代以降のわずか150年間ではなく1500年に及ぶ日本の歴史を尊重するものである。一方、現在の自民党が謳う保守はこの近視眼の方であることは言うまでもない。
本書で枝野は政権交代に向けて現在ある社会のあり方ではなく、もうひとつの社会のあり方を選択肢として提示している。それは「賃金の底上げ」「福祉重視」に基づく「内需拡大」である。
それは新しい考えでなく、折に触れて政策ビジョンとして共有してきたし、過去の枝野の著作でも表明されてきた。その政策を実現する政権が取れなかっただけのことである。
ところで、本書でちょっと物足りなかったのはゲームチェンジャー的政策への言及がなかったことである。「全国一律最低賃金」「ベーシックインカム」などに賛否は別にして言及してほしかった。
また、最近話題の資本主義や民主主義への疑問などもそうである。いわく「資本主義は根本的に環境保護に対立するもの」「SDGsは企業の無制限な経済活動への言い訳に過ぎない」など。
次期リーダーを狙う者として、こうした議論や話題を「意識している」くらいは言うべきではなかろうか。
さて、今回の総選挙ではようやく野党共闘が実現しそうである。選挙区調整がすすめば自民党と1対1の構図ができる。国民は自民党的「自己責任」社会か「支え合い」社会かという選択をすればいいだけである。いずれにしても今年中には結論が出る。